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鶉穴(うずらあな)巡検

 日本を代表する富士山は数万年前から幾度の噴火を経て、現在の標高まで成長した。噴火に伴う溶岩流は富士山周辺に100以上の溶岩洞窟を創り出している。
 富士山麓には国の天然記念物に指定されている観光洞の富岳風穴や鳴沢氷穴や西湖蝙蝠穴があるが、今回紹介する鶉穴(うずらあな)は観光客の安全を確保するために整備された観光洞ではなく、洞窟ができて以来の形を保つ自然そのままの非日常空間である。
 観光洞ではない富士山周辺(山梨・静岡県)の洞窟の多くは国県市町村や教育委員会などが管理しており、公的機関(担当部署)に入山(入洞)許可を申請する。
 鶉穴は個人経営の牧場内に存在するため、経営者(地主)への入洞許可が必要となる。また、牧場敷地内でも飼料を栽培する牧草地に洞口が存在し、入洞できる期間も牧草の収穫後の冬季に限られている。
 苔むした洞口を降りると、粘度の高いぬかるみが続く。洞口から数mから数十mの天井はバクテリアのコロニーで白く覆われ、通常の溶岩洞窟の黒い天井とは違ったコントラストが楽しめる。
 しばらく進むと比較的黒い天井となり、溶岩が天井から滴りながら固まった溶岩鍾乳が目に入る。よくある溶岩鍾乳は黒一色だが、鶉穴の溶岩鍾乳は黒・白・茶色が交じり合い独特の景観を楽しむことができる。
 さらに進むと壁面にロールしながら壁面から剥がれかかっている、ロール状溶岩棚になれなかったと思われる壁面が見られる。大きな落石が積み重なった箇所を抜けると、見所のひとつである高低差のある分岐に出る。固まる前の熱い溶岩が転がって球状になった溶岩球をはじめ、他にも語り尽くせない程魅力的なものが多数あるが、文字数制限のため割愛する。
 鶉穴は総延長820mの横穴であるが、観察しながら一周するだけで約2時間半もかかる。
整備された道路を800m歩くのにかかる時間は一般的に10分である。距離にすると同じ800mでも、危険な足元、高低差、狭洞部等の安全のためにゆっくり進まなければならない冒険心を刺激する箇所や、じっくり観察したくなるような、ここまでやって来た者だけが見る事のできる魅力的な二次生成物等、濃密な800mとなっている。
 皆様が、少しでも火山洞窟に興味を持って頂けたら幸いです。体験巡検も開催しています。非日常を体験してみたいと思いましたら、問い合わせフォームから連絡してください。


 
   

この情報は、「NPO法人 火山洞窟学会」により登録されました
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